消えゆく昼  (「寂しき曙」三木露風 明治34年11月 博報堂)より


暗き空のもと

森の梢はうちそよげり

そは遥か遠方にひそみたれど

我哀しみの眼は

木の葉の動く一つ一つさえ見定むべし


山の麓の貧しき村

黒き野は彼方にうづくまり

池はまたひろびろと水を湛えたり

そはすべて消えゆく灰色の昼にも似て

煙のごとく風 中空を乱す


ああ静かなる、されども心騒がしき夜

我独り遠方を悲しむ

哀れにおぼろなる方を


暗き暗き森の梢を